サカナ団の「ヴェリズモオペラ」期の最後を告げ、そのアプローチの集大成とも呼べる2作品の上演です。この公演の後、サカナ団の意識は、次に目指すべき課題へと、確実に方向転換を行います。その意味では、この公演が第2期としてのサカナ団の終着駅でもあります。
サカナ団の「ヴェリズモオペラ」期とは、少しでも「まともな」オペラ団体になろうと悪戦苦闘しながらグランド・オペラに挑戦した結果、苦労の割には予算を増やす事が出来ず、装置や衣裳等に満足な費用を充てられない事の代わりに<演劇性>に向かっただけだとも(皮肉な見方をすれば)言えるかもしれません。とは言え、条件面での不遇と渇望、そこから生まれるハングリー精神は捨てたものでもないのです。後々考えれば、この時期に取り組んだアプローチが、知らず知らずに血となり肉となり、サカナ団の本質的な魅力として現れる時が来るかも知れません。(知らない間に太っていた事を、ある時体重計に乗って気付かされるのと同じ位、自らの変化・成長は唐突に知るものです。)
この公演を見たある有識者によれば、実に「リアル」だったとの事。それを微かな励みとしつつ、また偶然のきっかけにより、サカナ団は次のステップへと進む事となります。
ちなみにあまりの予算の無さに(?)、それとも単に目立ちたいだけで(?)チラシに載っている「道化師」の扮装をしているのは指揮者・神田本人です。この時の事として思い出すのは、ピエロの格好をし、このメイクをし、包丁を持ったまま近所の写真屋に飛び込んだ恥ずかしい記憶です。
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「カヴァレリア・ルスティカーナ」
「道化師」
写真:長谷川清徳
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