神田慶一自作オペラの第2弾。ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』を下敷きに子供時代の空想をテーマに作った作品。踊りあり歌ありの作風は「オペラ」とは一線を隔てたいと思い、あえて<音楽劇>という肩書きをつけています。エンターテインメントとしては面白おかしくできたのですが、第1作目の『銀河鉄道』と比べると作者自身としては、少々不完全燃焼でもあります。「銀河」が男の子のドラマであったのに対して、「アリス」は女の子のドラマで、男の子の気持ちはよくわかるものの、女の子の気持ちはさっぱり分からない作曲家が書いている為、作品の仕上がりとしては、体裁の良いバラエティショウではあるものの、舞台作品としてはクオリティの低下を免れていません。その点に於いては作曲者の力量不足が間違いなく露呈してしまった作品と言えるでしょう。作曲者自身は、この反省を活かし、その後、自分自身で理解できない主人公を登場させる事はなくなりました。別のいい方をすれば、この作品以降、神田作品に登場する主人公達は、それぞれが神田自身の分身として現れる事となります。(あくまでも自意識の問題ですが)その様な作者の分身としての主人公が設定された作品は、それだけで躍動感があるものです。
それでも、この作品は一般受けと子供受けは良い作品らしく、(この辺りが創作者とのギャップなのですが)ありがたい事にお客様にはずいぶんと喜んで頂きました。確かに面白いシーン、感動的なシーンには事欠かない舞台作品ではあるのですが。
ちなみにタイトルの『アリス!』はミュージカル『オリバー!』の表記を習って付けた事は、下らない事柄ながら一応明らかにしておきます。
写真:長谷川清徳
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