最も「悪名高き」、そして最も「話題性の豊富な」サカナ団のカルメンです。舞台を女子高校に移し、タバコ工場の女工達は全員セーラー服という奇抜な舞台はお客さんには大絶賛。ところが、反対に評論家の方々には大バッシングを受けました。あるご意見では「サカナ団はまともな公演が打てないから、こんな変わり種に挑戦するんだ」と言われました。最近まで流行っていたカウンターテノールをカルメン役としていち早く起用した作品でもあります。
それにしても確かに「冒涜(ぼうとく)」と言われても仕方のない様な作品処理ではありますが、それも若さの成せる業かも知れません。「女子高生と先生の禁断の恋」の発想は、当時ブームとなっていたテレビ番組「高校教師」から頂戴しました。遊びはそれに留まらず、エスカミーリョを闘牛士ではなく、ロックスターに設定しています。当然、第2幕ではバーにロックバンドが飲みに現れ、偶然居合わせたファンは熱狂するという設定になっていますし、第3幕の闘牛場に入っていく箇所は、スタジアムに入っていくロック・ミュージシャンと追っかけファンのシーンになるわけです。
ある音楽雑誌には「クプファーの演出より過激な(!)」と書かれましたが、まさにこれこそがサカナ団の本領発揮。ここまで読み替えを完璧に行えば、オペラ上演としては実に面白いものだと思います。もちろんどのオペラ作品でも通用するとは思えない手法ではありますが、そもそもオペラの面白さの一つには、解釈の面白さがあるのです。(近年、演出家の時代と呼ばれるオペラの傾向は、その要素を色濃く表したものでしょう。)
いずれにせよ、青いサカナ団が(どんな言われ方をされたとしても)世に認識される契機となった<出世作>であることは間違いなく、今でもこの公演は大変に思い出深いものです。そして自分でも、この<アイディア>は秀逸だと思っています。
写真:長谷川清徳
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