サカナ団の現代オペラ発掘シリーズというべき作品で、日本初演。300年以上も生き続けている女性をテーマにしたSFオペラで、その主題を聞いただけでも大変に興味深い作品です。この作品の原作を書いたチャペックは「ロボット」という言葉を生み出したチェコスロヴァキアのSF作家。作曲したヤナーチェクも同国の大オペラ作曲家です。
この公演の実現は、(何しろ楽譜の入手から、作品の勉強まで色々な点で困難であった為に)後援をして頂いたチェコ大使館、日本チェコ協会、日本スロヴァキア協会、さらにその様な各組織への橋渡しを努めて頂いた故佐川吉男先生のご尽力無しにはあり得なかったでしょう。
音楽は美しいもののストーリー展開は実にくだらないオペラがたくさんある中で、この『マクロプロス事件』は、物語としての面白さは勿論のこと、(残念ながら日本ではあまり知られていませんが)音楽も非常に魅力的で美しい、その意味では完璧なるオペラ作品なのです。作曲者のヤナーチェクは1854年生まれ、1928年没。その時期だけを考えればサカナ団の愛するプッチーニと同時期の作曲である事がわかるでしょう。しかし一般での知名度こそ違えども、プッチーニに負けず、ヤナーチェクも実に素晴らしい歌劇を何作も生み出している<オペラ作曲家>なのです。
また機会があれば、この作品の再演や、ヤナーチェクの他の作品への挑戦等、是非取り組んでみたいものですが、日本でオペラを上演する時(悲しい事に)やはりプッチーニやヴェルディの方が容易に準備を整えられ、集客が見込める事は事実なのです。
何はともあれ、この時期にサカナ団がこの知られざる作品にトライした事は大英断であり、また快挙であると自ら思います。
写真:長谷川清徳
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