ヴォルテール作の「キャンディード」をサーカス小屋を 舞台に繰り広げた作品。ちょっと愚かな主人公キャンディードの冒険を「夢とはどんなもの?」というテーマに 基づき脚色しました。実は日本初の「キャンディード」の幕もの上演はこのサカナ団公演が初めてではないかと思いますが、残念ながら「サカナ流」に演出を施し、全曲を使用せず、「翻案」の色が濃い上演でした。その意味では「日本初演」とは呼べない上演形態だったわけです。なにしろ第1回公演「壁」に続く作品がこれですから、サカナ団の本質とでも言うべきマニアックな体質、後にそれは現代オペラ(もしくは現代舞台作品)の発掘という団のテーマとなる体質は既にこの頃から形成されていたわけです。
しかしながら全ては若者達の無謀な暴挙とも言うべき公演で、まだオーケストラを組織できず(この時点では管楽器だけのアンサンブルでした)、編曲も自分達で行ってしまう様な有り様は、あまりほめられたものではないでしょう。サカナ団を最も初期から現在まで見て頂いている方に言わせれば、最もサカナ団らしいテイストが発揮されていたのはこの公演だということで、後々に次々と生み出すオリジナル作品の為の、そして企画してから公演に漕ぎ着けるまでのイロハを「勉強」していた時期なのかも知れません。
写真:長谷川清徳
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