国立音楽大学の学生・卒業生(しかも卒業したて)のメンバー数人によって作られた団が初めて公演活動を行ったのがこの公演でした。中心となっていたのは楽理科と作曲家の学生・卒業生であり、声楽家が主導権を握っている団体ではないことは、将来的な可能性を多くはらんでおりましたが、残念ながら、この時点ではまだまだ、サークルの延長の様なノリであった事も事実です。実際のところ、青臭い若者特有の、理論ばかりが先行する集団でもありました。まだ「サカナ団」の名前も付いていない時期で、将来的なビジョンさえも不明確な、それでいて何かしらの理想に向かって突き進みたい衝動がこの様な団体活動を起こしたきっかけだったのだと思います。(ちなみにその理想とは、日本のオペラ界を自分達の世代で新しい時代へと導くんだ、というあまりに荒唐無稽な、それでいて強烈な自意識を伴ったものでした。)
この作品は安倍公房氏原作の代表作とも呼べる不条理劇をオペラ化した作品。実験精神にあまりに満ち溢れておりましたが、一般受けには程遠い作風でした。しかしその後のサカナ団公演に脈々と受け継がれ、その根底に流れるアヴァンギャルドなスタイルはこの第1作からもうかがい知れると思います。
演奏はピアノ2台と打楽器奏者2名の計4名。記念すべき1回目の公演は、国立音楽大学の芸術祭内で、2回目の公演は国立市民芸術小ホールでのものでした。(料金はなんと1800円!)
|